データサイエンティストに求められるスキルと実務
この記事は、一般社団法人データサイエンティスト協会と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が共同で作成した『データサイエンティストのためのスキルチェックリスト/タスクリスト概説』をもとに、現代のデータサイエンティストに求められるスキルや実務の全体像を整理したものです。データ活用が日常化した今、何を学び、どのように実務と向き合えばいいのかを考えるヒントになればと思います。
なぜ今、データサイエンティストなのか
AIや5Gの進展によって、社会に流れるデータ量はかつてない規模に拡大しました。ネット通販、自動運転、スポーツのリアルタイム解析、感染症対策など、私たちの日常のあらゆる場面でデータサイエンスが活用されています。
一方で、フェイクニュースの拡散など、データ活用に伴うリスクも浮き彫りになっています。こうした状況を受け、単なる技術者ではなく、社会的責任を意識してデータと向き合う「プロフェッショナル」としてのデータサイエンティストが求められるようになりました。
データサイエンティストに必要な三つの力
データサイエンティストが実務で成果を上げるためには、次の三つのスキルセットが欠かせません。
- ビジネス力:課題の背景を理解し、整理して、解決に導く力
- データサイエンス力:統計学やAIを活用して、データから知見を引き出す力
- データエンジニアリング力:データを扱いやすい形に整え、運用まで実現する力
これらは互いに補完し合う関係にあり、どれか一つでも欠けると十分な成果を出すことが難しくなります。
スキルには次の四段階のレベル設定があります。
- Assistant(見習い)
- Associate(独り立ちできるレベル)
- Full(プロジェクトをリードできるレベル)
- Senior(業界を代表するトップレベル)
すべてを一人で完璧にこなすことは想定されておらず、チームで役割を分担することが現実的なスタイルとされています。
スキルチェックリストとは
スキルチェックリストは、データサイエンティストが身につけるべきスキルを体系化し、レベル別に整理したものです。
主な特徴は次のとおりです。
- スキルを分野別に分類(例:基礎数学、データ加工、モデリングなど)
- スキルごとにレベル(見習い〜棟梁)を設定
- 重要度に応じて「必須スキル」を明示
- テクノロジーの進化に合わせて、定期的に見直し・更新
自分の得意・不得意を客観的に把握できるため、学習計画やキャリアデザインに役立ちます。
タスクリストとは
タスクリストは、データサイエンティストが実務で取り組むタスクを体系的に整理したものです。
プロジェクトは次の四つのフェーズに分かれて進行します。
- 企画立案・プロジェクト立ち上げ
- アプローチ設計・データ収集・データ加工
- データ解析・可視化・モデル評価
- 業務への組み込み・業務改善
タスクリストの特徴として、タスク同士が一方向に流れるだけではなく、必要に応じて前の工程に戻る「フィードバック型」の構造になっている点が挙げられます。現実のデータプロジェクトでは、必ずしも予定通りに進まないことが多いため、この柔軟な設計は非常に実践的です。
どんなふうに活用できるか
スキルチェックリストとタスクリストは、さまざまな立場で活用することができます。
- 初心者・学生:どこから学び始めればいいかを明確にできる
- 実務家:自己評価とスキルアップの道筋を描く
- チームリーダー・マネージャー:チームスキルの見える化と育成計画に
- 採用担当者:求める人材像を具体化し、適切なマッチングに
- 教育機関:データサイエンス教育のカリキュラム設計に
とくに組織全体でデータ活用を推進する場合、共通言語としてこれらのリストを持つことは大きな強みになります。
まとめ
データは、ただ存在するだけでは価値を持ちません。
そこからどのように知見を引き出し、どのように社会やビジネスに還元するかが問われる時代です。
スキルチェックリストとタスクリストは、自分の現在地と目指すべき姿を照らし出してくれるツールです。
これからデータサイエンティストを目指す方も、すでに実務に携わっている方も、自分の成長のために、そして社会に貢献するために、ぜひ手に取ってみてほしいと思います。